睡眠時無呼吸症候群
心拍変動の臨床応用2(ANSERS)

その場での自律神経機能は、その人のその時点での自律神経機能を評価するために役立つし、何よりも検査が短時間で済むことが利点である。

しかし、本当に知りたいことは、その人が日中生活している時にどうなのか、睡眠中にどうなのか、ちゃんと急速は取れているのかなど、よりダイナミックな情報である。その測定を可能にしたのが、24時間自律神経機能測定器、ANSERSである。

基本的には24時間ホルター心電計と同様の検査であるが、心電図の波形ではなく、心拍変動を解析するわけだ。さらに、この機械の優れた点は、加速時計が内臓されているため、体位と体動が同時にわかることである。本当に深く寝ている時は、当然体位は臥位で、体動はほとんど消失する。そういう状態で、交感神経機能亢進、副交感神経機能低下が認められれば、寝ているのに、急速がとれていないことがわかる。うつ病や慢性疲労の場合に、そのような状況が認められる。そして、病状の回復程度を評価することにも利用できるわけだ。

慢性疲労、易疲労感を長期にわたって訴えており、これまでいくら検査をしても異常が発見されず、ヒステリーとか大げさとかわがままのように見られていた方がいた。その方に検査を行ったら、睡眠中だけではなく、日中も臥位になっていることが多いことが分かった。それなのに、交感神経機能が24時間通して異常高値を示していることが分かった。外から見ても誰にも分からなかったのだが、内的緊張は習慣的に持続しており、自動車でいうならアイドリングなのにエンジンが3000回転くらいで空ぶかしし続けている状態だ。ものすごく燃費がわるいし、休まることがない。その結果、疲れやすさと、抑うつ状態に陥りやすいことになる。

こういう現象は、このような検査をしない限り、決してわからなかったことであるが、本人の言葉を現実より遙かに軽くとらえていたことに、痛く反省させられた。

以下に、この検査の結果の一部を示す。この検査では副交感神経の指標は√HF、交感神経の指標はLF/HFを用いている。

このケースも、夜間睡眠中、日中活動中通して、交感神経活動が高く、睡眠中の副交感神経活動上昇が認められない。疲労しやすいし、寝ても疲労がとれないことになる。


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